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命か生か

 

命(めい)というのは、個々の人間に与えられているものです。生(せい)は、死なない宇宙の命です。生は一つの命がつながっていることです。一つの命がつながっていることと、個々の人間が生きていることの関係をよく考えることです。
母親は、子供を自分の子供だと考えてしまいやすいのです。人間の命は、命(めい)という形によって伝承されています。だから、個々の人間としての意識を持っていることが間違っているのです。
だいたい、女性が子を産むとはどういうことかということです。命を伝承することに非常に大きい意味があるのです。
現代人はセックスの意味が全く分かっていません。仏教では性を無明煩悩の対象のように言います。聖書では欲望の対象のようになっています。ところが、そうではないのです。
男が女を、性欲の対象として見ることは、女性に対する甚だしい侮辱です。間違っているのです。女性が子を産むのは、太陽の自然の働きによって地球が生物を産んでいるようなものです。
地球から生まれた生物には、皆命があります。地球そのものが、巨大な生物であって、地球の命が生物に移っているのです。
地球から生まれたものは、全部生きています。無機物も有機物も、新陳代謝という形で生きているのです。母胎は地球とよくにているのです。
親の命を子が受けついでいるから、それでいいのではないかという日本人はたくさんいます。ヨーロッパ社会ではこういう考えをしていないかもしれません。親の方から言いますと、私は命の実体が分からなかった。そういう時間がなかった。忙しくて勉強をする暇がなかった。そこで、息子にしてもらいたい。自分は死んでも息子が生きているから、それでいいのではないかと考えるのです。
生きていることは、生という命の本質を、現在経験していることなのです。生の本体を経験していることを、生きているというのです。
生きている間に、命(めい)がある間に、死なない命をつかまえなければならない。つかまえないと、大変なことになるのです。カルマを果たすということは、自分の人生をのりこえることです。彼岸へ行くというのは、このことなのです。
自分が生きているのは、此岸です。彼岸は自分が生きているのではなくて、命が自分になって現れているのです。天地の命、宇宙の命の本物が、私というかっこうで現れているのです。地球の命が、私というかっこうで現れている。この命をつかむことが、人間が果たさなければならない唯一の責任なのです。
これは、しようと思えば誰でもできるのです。花を見れば美しいと思う。物を食べればおいしいと思う。美しいとか、おいしいことが分かることが、いのちを経験していることなのです。
母性愛とは何か。母親が子供を愛することは、女性一人の問題とは違うのです。神の問題なのです。女性には神の御霊(みたま)の感覚がそのまま現れているのであって、この感覚を男がつかまえるためには、命の性(さが)に対する考えを改めて、レベルの高い感覚を持つ必要があるのです。
常識を認めないで、常識を解脱する気持ちを持てと、般若心経は言っているのです。般若心経は、現在の社会常識に満足せずに、五蘊皆空を体得する。自分が生きている向こう側へ出てしまえと言っているのです。
母性愛は、神の御霊が人間の霊魂を愛する愛を、そのまま現しているのです。神の御霊が人間の霊魂を愛する驚くべき愛です。これが女の性(さが)なのです。女の性が、本当の神をつかまえるために、絶対に必要なのです。男の理屈よりも、女の直感の方が、はるかに次元が高いのです。
しなければならない責任があります。これが、業(ごう)を果たすことです。般若心経は、釈尊の悟りを説いている。聖書はイエスの命を説いている。釈尊はイエスより五百年も前の人です。この釈尊の悟り、一切空という悟りをしっかりとふまえなければ、自分が生きているという気持ちの外へ出ることはできません。これをしなければ人間は死んでしまいます。
人間は、自分で生まれたいと思わなかったはずです。生まれたいと思わなかったのに、生まれてきたのです。従って、命は自分のものではないのです。これは簡単なことです。これさえ分かれば、人間は死なないのです。
花を見てきれいだと思うのは、自分の命で見ているのではありません。花が咲いているのは、天地の力、地球の力が、花になって現れているのです。これは死なない命なのです。
これを見てきれいだと思うのは、人の中に死なない命があるからなのです。
花は天地自然が造ったものです。天地自然が造ったものが分かるのは、人の中に天地自然の命が生きているからです。それがなければ、天の美しさが分かるはずがないのです。
女性が子を産むことは、神の創造の業(わざ)を人間が行っているのです。自分ができなくても子供がしてくれるという考えはやめて頂きたい。目が黒いうちに命の真髄をつかまえなければ、死んでから大変なことになるからです。

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